『美味しんぼ』からみる日本の食事情

takashi/ 5月 15, 2008/ お仕事

今日は、軽い気持ちで『美味しんぼ』の記事でもブログに書こうと思っていた。
しかし、調べれば調べるほど自分の浅はかさに気づいたのである。

記事の内容はこうだ。
人気マンガ『美味しんぼ』の父子が歴史的和解を果たす!
12日発売の小学館の週刊誌「ビッグコミックスピリッツ」で、主人公の山岡士郎と、父の海原雄山が25年にも及ぶ確執からついに解き放たれ、和解したという。
原作者の雁屋哲(かりやてつ)さんは自身のブログで「私にとって特別な日」と書いている。

『美味しんぼ』といって知らない人はいないだろう。
マンガもそうであるが、アニメや実写で放送されていたこともあり、広く国民に知られた名作といっても過言ではない。

そんなマンガがなぜここに来てとりあえず一区切りつけたのか、理由を探って雁屋さん本人のブログを訪問させていただいた。

この方は熱い。
情熱をもって25年もの間『美味しんぼ』に取り組んできたことが伺える。
ブログから抜粋させていただいた文章をいくつか載せよう。

「本物、安全、と言うことを追求していくと、どうしても今の食品業界を批判しなければならないときがある。」

「それを批判すると、広告主としての金の力で、出版社やテレビ局に迫ってくる。」

「企業だから儲けなければ成り立たないのは分かるが、倫理観念のない業者、会社が多すぎる。そのあたりの事をもっと厳しく「美味しんぼ」で追求したかったのだが、力不足で及ばなかったのが残念だ。」

「業界の不正などについて書いていると、書いているこちらの気が滅入ってしまって、「こんな、暗い話は面白くないや」と、途中でやめてしまったことが度々ある。」

皆さん、どうお感じになっただろう。
私はこんなに熱い思いで美味しんぼが作られていたとは夢にも思わなかった。

今では毎日のように、食品偽装・異物どころか毒まで混入・残り物の使い回し・・・といった情けないニュースが巷にあふれている。
この現状を、ずっと以前から雁屋さんはご存じだったのかもしれない。
言いたくても言えない。

悔しい思いもたくさんしてきたことだろう。
主人公の山岡に言わせたくてもギリギリの所がやっとだったはずだ。

数え上げたらきりがないくらい『本物』や『安全』といった概念からかけ離れ、金儲け主義最優先になってしまった日本の食事情を最も嘆いている一人といっても過言ではない。
彼の地道な取材や努力のおかげで、私たち日本人の食はかろうじて守られている部分もあろう。

今後は、美味しんぼをやめるわけではなく、進め方を変えると言っている。
日本の宝である郷土料理を大切にし、後世に伝える義務があるという考えのもと、「力の続く限り、小学館がさせてくれる限り「美味しんぼ」で「日本全県味巡り」を続けたい。」と語っている。

「都会は地方という土壌から栄養を摂って咲く花である。地方が疲弊してしまったら、都会も疲弊する。もう、その兆候は日本中顕著に表れている。」

本当に彼の言葉には深みがある。
確かに今地方に光を射す人が必要だ。
それが彼のような偉大な人であるならなおありがたい。

一マンガ原作者とはここまで深く自分の使命を負うものなのであろうか。
いや、これは肩書きは関係ないかもしれない。
彼の人柄であり生き方そのものである。
改めて『美味しんぼ』を読みたくなった。
とりあえずは、本当にお疲れ様でした。